
「いい仕事は都会にしかない」は、もう古い。
やりがいのある仕事も、高い年収も、成長できる環境も、都会に出なければ手に入らない。長らく信じられてきたこの前提が、いま静かに崩れつつあります。住む場所とキャリアを切り離せる時代の話をします。
働き方・キャリア

「若いうちは出社して、先輩の背中を見て学んだほうがいい」。リモートで働けていた会社が出社回帰を打ち出すとき、そして若手が完全在宅を希望するとき、必ずと言っていいほどこの理屈が登場します。出社しないと成長できない。だから会社に来なさい、と。
一見、もっともらしく聞こえます。実際、対面で学べることがあるのも事実でしょう。でも、立ち止まって考えてみてください。その主張は、本当にあなたの成長のために語られているのでしょうか。 それとも、教える側にとって都合がいいだけなのを、成長という言葉で包んでいるだけでしょうか。今日は、成長と場所の関係を、少し丁寧にほどいてみます。
「出社しないと成長できない」という文は、大きく聞こえるわりに、中身が曖昧です。まず、そこで言う「成長」が何を指すのかを分解してみましょう。
成長にはいくつもの側面があります。仕事の知識やスキルを身につけること。判断の質を上げること。人脈を広げること。仕事の型や作法を体に入れること。これらのうち、本当に「同じ空間にいること」でしか得られないものは、どれだけあるでしょうか。
知識やスキルの多くは、ドキュメントや録画、オンラインのやりとりでも学べます。判断の質は、経験とフィードバックの積み重ねで上がるもので、場所には縛られません。たしかに、雑談から得る偶発的な学びや、その場の空気で察する類のものは、対面のほうが得やすい面はあります。でも、それは成長の全部ではなく、一部です。「出社しないと成長できない」は、その一部を、あたかも全部であるかのように語ってしまっているのです。
もし本当に「リモートだと若手が育ちにくい」現象が起きているとしたら、その原因は在宅という場所そのものではなく、育てる仕組みが用意されていないことにあります。
対面の職場では、新人教育の多くが偶然に頼っています。隣に座った先輩が困っている様子に気づいて声をかける。ふとした雑談で仕事のコツが伝わる。この「なんとなく教わる」仕組みは、同じ空間にいることが前提になっている。だからリモートにすると、その偶然が消え、育たなくなったように見えます。
けれど、それは裏を返せば、対面の職場が「意図的に人を育てる仕組み」をサボってこられたということでもあります。場所の力で偶然に頼れたから、教え方を設計しなくてよかった。リモートでうまく人を育てている会社は、この偶然を仕組みに置き換えています。オンボーディングの手順を整え、質問しやすい窓口を用意し、判断の背景を言葉にして残す。成長を左右しているのは、出社しているかどうかではなく、育てる仕組みがあるかどうかなのです。
「先輩の背中を見て学べ」という言葉には、もうひとつ見落とされがちな問題があります。それは、教える側の負担を、学ぶ側に押しつけている点です。
背中を見て学べというのは、裏を返せば「こちらは体系的に教えないので、そちらが勝手に盗み取ってくれ」ということでもあります。運よく面倒見のいい先輩に当たれば成長できるし、そうでなければ放置される。この属人的で運任せなやり方を、成長という美しい言葉でごまかしている面は否めません。本当にあなたの成長を第一に考える会社なら、背中を見て学べと言う前に、学べる仕組みを整えるはずです。
だから「出社しないと成長できない」と言われたら、一度こう問い返してみてほしいのです。それは、出社すれば自動的に成長できるという意味なのか。それとも、成長を支える仕組みを、この会社が場所任せにしてきただけなのか、と。
とはいえ、成長したいという気持ちそのものは、とても大切です。問題は、その成長を「出社」という条件とセットで語る主張を、うのみにしないことです。あなたが本当に見極めるべきなのは、出社の有無ではなく、その会社に人を育てる仕組みがあるかどうかです。
ここで、リモートを前提に運営してきた会社が、ひとつのヒントになります。そうした会社は、対面の偶然に頼れないぶん、育成やナレッジ共有を仕組みとして整えている場合が多いからです。逆に、出社を強く求める会社ほど、育て方を場所任せにしてきた可能性があります。出社の頻度は、その会社が成長をどう支えようとしているかの、ひとつの手がかりになります。
私たちNoTrainは、掲載する求人について、実際にどれくらい出社が必要なのかを募集要項の原文まで確かめています。表向きの「リモート可」ではなく、その会社が本当に場所に縛られない働き方を設計しているのか。それは、成長の仕組みを場所任せにしていないかを推し量る材料にもなります。成長を口実に通勤を強いられるのではなく、仕組みで人を育てる会社を、事実から見極めてほしいと考えています。
「出社しないと成長できない」という主張は、成長の一部を全部であるかのように語り、教える側の都合を成長という言葉で包んでいることが少なくありません。成長を左右しているのは、同じ空間にいるかどうかではなく、人を育てる仕組みがあるかどうかです。背中を見て学べという運任せのやり方を、うのみにする必要はありません。あなたが見極めるべきは、出社の有無ではなく、育つ仕組みの有無です。
成長を場所で語られることに違和感を持った人へ。NoTrainのニュースレターでは、出社頻度を事実まで確かめたビジネス職のリモート求人を、毎週お届けしています。仕組みで人を育てる会社を選ぶ材料として、よければ登録してみてください。

やりがいのある仕事も、高い年収も、成長できる環境も、都会に出なければ手に入らない。長らく信じられてきたこの前提が、いま静かに崩れつつあります。住む場所とキャリアを切り離せる時代の話をします。

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